しかし、習氏は香港における重要演説で、「香港の独立は絶対に許さない」や「香港は中国の一部であり、1つの国という前提があるから、(資本主義を維持するという)香港の2制度が存在する」などと香港の民主派や独立派を強く牽制。場合によっては武力の行使も辞さないとの態度を明らかにした。
この習氏の香港訪問以後、香港政府の民主派弾圧の姿勢は強まっていった。香港当局は2014年の「雨傘運動」といわれる大規模民主化デモを主導した学生団体の元幹部を裁判に訴え、裁判所も実刑判決を下すなど、民主派、独立派は運動を封じ込められつつある。
香港では懲役3カ月以上の判決を受けると5年間の被選挙権が停止となるため、選挙に出ることもできず、若者を中心に無力感が漂い、若者の民主化離れを招いているのも事実だ。
しかし、今回のデモで、香港最大の民主派政党「デモシスト」が寄付を募ったところ、約53万香港ドル(約740万円)もの募金が集まった。昨年は42万香港ドル(約600万円)だったため、昨年よりもデモ参加者が少なかったにもかかわらず、逆に募金額は増加している。
この背景には、中国政府の意を受けて、香港当局が強権姿勢に転じていることに、一般市民は強い警戒感を覚えていることも影響しているだろう。本来の香港が持っている民主的で自由な気風を守ろうという気持ちが、民主派勢力への期待となって表れているとみられる。