「ドラマや歌舞伎などのDVDが好きで、お花見や誕生会などの時には、車椅子で外に連れ出すこともあり、社主はとても喜んでいました」(介護スタッフ)
ところが、昨年7月にそうしたひとときは終わりを告げた。介護方針が大きく変わり、間もなくして9人いたスタッフが全員解雇される事態となったのだ。
◆「社主は“なんで?”と涙を流した」
美知子社主は、倒れる寸前、将来の相続を考えて後見人制度の利用を申し立てた。「財産管理」を藤木克尚税理士、「身上監護」を吉田途男医師が担うことになった。先述の介護方針変更は後者の吉田氏が決定したとされる。
美知子社主の父、龍平氏は、明治時代に神戸の高級住宅地・御影に約6000坪の屋敷を構え、敷地内に重要文化財を含む書画骨董を所蔵する「香雪(こうせつ)美術館」を併設した。今年3月、その分館として朝日新聞大阪本社の敷地内に「中之島香雪美術館」をオープンしたが、それが、騒動のきっかけとなった。前出の親族が解説する。
「この分館を事前に社主に見せる計画が進んでいたが、昨年7月、吉田先生が一方的に訪問キャンセルを決めた。『何かあったら困る。これが社主の意思です』という。そのあたりから吉田先生による介護態勢の主導が強まり、7月以降、刺激を与えない『見守り』が徹底され、リハビリや車椅子での散歩などがなくなり、吉田先生とスタッフとの関係がギクシャクし始めた。そして9月にスタッフは全員、解雇を通達されたのです」