また、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アント・フィナンシャルが運用している4%を超える高金利のMMF(マネー・マネジメント・ファンド)「余額宝」の管理資産規模は、わずか4年で23兆3000億円に膨れ上がり、世界一になったという。その額は、2位のJPモルガン・アセット・マネジメントが運用するMMFの2倍以上だ。
さらにアント・フィナンシャルは、小規模企業や個人事業主への融資を一瞬で行なっている。「3・1・0」というシステムで、スマホのアプリから融資を申し込むと即座にコンピューターが可否を判断し、数分以内に送金される。融資申請の記入に必要な時間が「3」分、可否を判断する時間が「1」秒、そして審査に携わる人間は「0」人。つまり、融資対象の取引状況や経営状況などの情報を蓄積したビッグデータに基づいて信用を評価し、AIによる審査だけで判断を下しているのだ。融資申請で未だに何枚もの書類にサインして実印を捺さねばならない上、審査に何日もかかる日本の銀行とは月とスッポンである。
そもそも日本の銀行は預金と融資の担当が別々で、10年付き合っても信用格付けができていない。顧客から見て組織が異なると、新たに「申込書」を提出しなければならない。顧客中心ではなく、銀行の縦割り組織の中で時代遅れの“天動説”を貫いているのだ。
中国だけでなく、インドも2009年に指紋と虹彩の生体情報や顔写真を登録する国民識別番号制度「アドハー」を導入したことにより、今や「スマホ=銀行」になっている。インドの場合、地方では銀行の支店がない町や村が大半だから、アドハーを活用した電子マネーやスマホ決済などのモバイル金融サービスが一気に普及したのである。モディ政権が2016年に「脱税退治」で500ルピーと1000ルピーの高額2紙幣を廃止したことも、キャッシュレス・ソサエティへの移行を後押ししている。