山下:小宇宙と呼ばれる空間をぜひ体感していただきたい。茶室はわずか2畳ながら狭さをまるで感じない造りが見事です。
壇蜜:先生の後ろ、壁の角が緩やかにカーブしていますね。
山下:角張らず、湾曲しています。床の間の天井も覗いてみてください。丸みがあって、洞穴みたいですよ。
壇蜜:わっ、本当です。奥行きが感じられて窮屈さがありません。
山下:この茶室の天井も平天井が続くと窮屈ですが、壇蜜さんが座っている客人側は屋根の構造を活かして段違いに高くしてある。狭苦しく感じさせない仕掛けがたくさん施されています。本物の待庵の中へ赤瀬川さんとの取材で入れていただき3時間過ごしたことがありますが、まったく狭く感じませんでした。
壇蜜:コンパクトな2畳の茶室を実寸より広く感じさせる技法は上級なマジックですね。錯覚も建築を育む要素だと感じました。先日、エッシャー(“視覚の魔術師”と称されるだまし絵の画家)のTシャツを買ったので、個人的にタイムリーな感覚です。
山下:待庵は窓の位置も不規則で面白いですね。また、桂離宮などの古建築を再解釈し、近代建築の新たな創造の可能性を拓いた丹下健三自邸は、障子の枠が不規則になっています。