「転倒の多くは下山中に起きます。特に年配の方は筋力が衰えているのでふらつきやすく、踏ん張れずに、大ケガする方は多いですね。遠回りでも傾斜ができるだけ緩いルートを選ぶといい。脚の負担を軽くするために、ストックを両手に持つ方法もあります」

 己の限界を知り、衰えは知恵で補う。それが年齢に応じた登山術なのだ。

「無理して、遭難してしまった人をたくさん見てきました。天候や体調に不安がある時は『次がある』と、諦める勇気を持ってほしい」(油井氏)

「僕も若い頃は、頂上に登ることばかり考えていましたが、今は、途中で写真を撮ったりして、楽しみながら登っています。山の楽しみは登頂することだけじゃないのですから」(齋藤氏)

 急がず、無理せず、気分良く。大人の余裕で楽しみたい。それが命を守ることにもつながっている。

●取材・文/吉田ヒロミ(医療ジャーナリスト)

※週刊ポスト2018年8月3日号

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