セクハラ事件後、その岡本に代わり事務次官就任が有力視されたのが、主税局長の星野次彦である。このときの国税庁長官候補には、関税局長の飯塚厚の名前が取り沙汰された。
ストレートで東大法学部を卒業している57歳の岡本に対し、同期入省ながら大学浪人や留年を経験している星野は58歳、飯塚は59歳と年上だ。
霞が関では今も昔も、浪人などをしないストレート入省のほうが組織からの評価が高い。それだけでなく、同期入省の次官レースでは、国の予算を預かる省内本流の主計畑を歩んできた岡本が、主税畑の星野たちを一歩リードしてきた。
したがってセクハラ事件がなければ福田がそのまま2年の“任期”を全うしたあと、2019年7月の岡本の次官就任が確実視されてきた。つまりセクハラ事件で財務省の目算が狂ったわけだが、おまけに岡本はモリカケ国会の渦中、官房長として国会対策に奔走してきたことが裏目に出た。改ざんは知らなかったとする「文書厳重注意」で済んだものの、経歴に傷がついたのは事実だ。
公文書の改ざんに加え、セクハラというダブルパンチに見舞われた財務省としては、組織の立て直しをしなければならない。が、岡本がトップに就けば、批判の矢面に立たされる。そこが頭痛のタネだった。
それでも財務省は当初、岡本次官の人事原案を官邸に提案した。それはなぜか。そんな根源的かつ素朴な疑問について、改めて別の財務省幹部にぶつけると、次のように解説してくれた。