ちなみに先頃、東京地検特捜部に息子の“裏口入学”事件で逮捕された文科省の佐野太は、直接的な私大の窓口ではなかった。が、特捜部はその職務権限の広さを認定して逮捕・起訴している。財務省の官房長は、主計局長とともに次官コースの重要ポストでもある。先の財務省幹部は、こう吐露した。
「政権とのパイプ役を担う官房長のところには、省内のあらゆる情報があがってきます。森友問題の重大事実を知らなかったとは思えないし、少なくとも知らなかったでは済まされません。だから岡本さんを次期次官にするというのは、省内でも異論がありました」
そこへセクハラ事件が起き、財務省解体論まで持ち上がる。官邸は岡本事務次官原案を一旦、差し戻した。そこから財務省人事の迷走が始まったのである。
◆菅vs麻生の“折衷案”
かつて「大蔵一家」と呼ばれた財務省は、その固い結束力と国家予算を握っているという自負から、ときの政権にも堂々とモノ申してきた。が、いまや安倍一強の下、官邸の顔色をうかがっているのは、他省庁と似たり寄ったりかもしれない。
今度の2トップ人事を巡っては、岡本事務次官原案が消えたあと、官邸が主税局長の星野事務次官案を主導した。そこに異論を唱え、財務官の浅川雅嗣(60)起用に舵を切ったのが、財務大臣の麻生だった。浅川は麻生の首相秘書官として仕えていた関係から信頼が厚いといわれ、財務省は守護神の麻生とともに官邸案に対抗した。が、結局、その抵抗も無駄だったというほかない。