「理由の一つは、組織立て直しを託せる最適な人物が岡本さんだということ。もうひとつは、主計畑の岡本さんは、森友学園の窓口だった近畿財務局やその上の本省理財局にはいなかったこと。森友学園国会を乗り切ったとして、当時の佐川(宣寿)理財局長は国税庁長官に就任しました。しかし、税務畑ではない岡本さんは森友問題のあいだ、詳しい事情を知らされてなかったと言い逃れてきた。それで、岡本次官の原案を官邸に持っていったようなのです」
エリート集団の驕りというほかないが、この間、私が会った財務省の関係者たちは、平然を装っていた。公文書改ざんやセクハラ問題について尋ねると、事務次官経験者をはじめ、幹部たちは決まってこう答えたものだ。
「財務省には、権限は局ごとという不文律があり、立ち入れないので情報交換もしない。何か問題が起きたとき、それが自分の身を守るリスク管理にもなるからね。だから次官や主計局長、官房長といった首脳3役は、森友問題の対応にタッチしていない」
だが、その反応はとても額面通りには受け取れなかった。現実には森友学園を巡る公文書の改ざんは、財務省の組織を揺るがす深刻な事態である。岡本は、その改ざん当時の官房長である。
そもそも、どの省庁であっても、官房長は国会対策の任を担う。国会であれほど揉めた案件について、「知らない」で済むわけがない。なにより官房長は政権中枢ならびに他の省庁との調整役の任があるため、あらゆる重要職務に触れる。それに応じた職務の権限が与えられている。