そんなこんなで、いつものように朝、ボクシングジムに行くと、会長の実家が空調設備屋さんだったというのを思い出し、相談してみると、「外の排水パイプにゴミか何か詰まっているんじゃないかな、それで水が逆流しているのかも、パイプを口で吸ったら直るかもしれないよ」と言われ、家に戻り、早速、屋根にのぼって、排水パイプに口をつけて吸ってみたら、やはり何か詰まってる模様、思いっきり吸い込んだら、スポンと何かが抜けて口の中に入ってきた。
ゴミかと思って、「ペッ」と吐き出したら、緑色のコガネムシでした。知り合いに、この話をしたら、その人の家も同じようなことがあって、電気屋さんを呼んだら、ゴキブリが詰まっていたそうです。
今回は自分で解決できたものの、もし電気屋さんが来ていたら、結構な散財になっていただろうから、みなさまもクーラーの水漏れがはじまったら、とりあえずパイプを吸い込んでみると良いです。吉と出るか凶と出るか、吸い込んでみないとわかりませんが、わたしはコガネムシだったので吉だったのでしょう。
●いぬい・あきと/1971年東京都生まれ。作家。「鉄割アルバトロスケット」主宰。2008年小説家デビュー。『ひっ』『ぴんぞろ』『まずいスープ』『どろにやいと』が芥川賞候補に。『すっぽん心中』で川端賞受賞。著作『俳優・亀岡拓次』が映画化。現在DVDが発売中。『のろい男 俳優・亀岡拓次』で野間文芸新人賞受賞。近刊に『ゼンマイ』(集英社)。散歩ばかりしている。
※週刊ポスト2018年8月10日号