実は1993年、僕はこの写真集の帯にキャッチコピーを書かせてもらいました。内容は「ヘルムート・ニュートンはまた罪を犯した」だったかな。今のヌード写真集の帯文なら「石田えりの白い肌があらわに……」なんてコピーになりそうなところを、一般人にはなじみのない写真家の名前を用いてアートに寄せた文がよく採用されたなと思いますね。
◆ヌードを撮られたがる女
1990年代に起きた日本のヘアヌードブームとは、「日本人がコンプレックスを払拭するために必要だった行為」ともいえます。最近の日本では「日本文化がスゴい」と礼賛する人も多いですが、この時期までの若者は「なぜパリに生まれなかったの。日本生まれなんてダサい」と海外に憧れを持つ人が多数でした。国が経済的に強くなっても、日本人の女のコは顔や体型、ファッションなどで欧米へのコンプレックスが強くありました。
そんな彼女らに対して、ヘアヌードは「30代の石田えりはリアル。私も脱ぎたい」と、女性の意識をポジティブに変えたのです。
ヘアが解禁された直後、ちょうど『an・an』では篠山紀信が撮影する読者女性ヌードモデル募集もありました。多くの女性が応募し、ヌードを撮られたがる女性の増加がニュースになるほどでした。日本の女性が自分の裸を見せることに自信を持ちはじめた時期だったのです。