特殊部隊を創るにしても、「知識はゼロ」で、指揮官からして、「まず、映画の『007』シリーズをすべて観ろ」「あの映画には、特殊な装備品が結構出てくるぞ。映画で勉強したらどうだ」といった程度。文字通り、暗中模索の中、「新戦術、新戦法、新装備品の研究」を担ってきたものの、特殊部隊での勤務が長すぎるとして、転出の内示を受けることに。官僚機構は、どこも組織の慣行と調和を最優先させるものだが、自衛隊もその例に漏れなかったわけだ。
特待生として日体大に入学し、卒業時には高校体育教師への採用が決まっていたが、人生のささやかな野心が自衛隊に入隊させ、大きな失望が退職を決意させた。改憲によって「自衛のための戦力保持」を正当化させる前に、すべきことを静かな熱意で語っている。
※週刊ポスト2018年8月17・24日号