遺体は死後3か月近く経って発見された(写真/共同通信社)
「なんだコラァ!」「てめえ、この野郎!」。日曜日の夕方、静かな住宅地に怒声が響いた。続けざまにバンッバンッと車のボンネットを激しく殴る音がして、2人の大人が駐車場で取っ組み合いを始める。馬乗りになった男がナイフを振り下ろすと、相手が首を押さえ、アスファルトがみるみる鮮血に染まった。
8月19日、埼玉県川口市で、32才男性の首を刃渡り8cmの折り畳み式ナイフで刺したとして、45才の男が殺人未遂容疑で逮捕された。
「駐車トラブルになって、逮捕された男が先に因縁をつけたみたいです。刺した後はそそくさと逃げていきました。首の後ろを刺されたかたは血だらけで、かけつけた救急隊員に“あと5mmずれていたら死んでいたぞ”と言われていました」(近所の住民)
それだけなら、素行の悪い男がカッとなって犯した暴力事件。だが逮捕された男の名前が全国紙で報じられると、一部の捜査関係者の脳裏におぞましい記憶がよみがえった。
男の名は、川口市の無職、湊伸治。彼は、約30年前に日本中を震撼させた「東京・綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯行グループの1人である──。
◆「もう殺してよ!」と泣き叫ぶと、少年らは笑い転げた
検察をして、「わが国の犯罪史上においても、稀にみる重大かつ凶悪な犯罪」と言わしめた事件だった。
事件発生は1988年11月25日午後8時半頃。アルバイト先から埼玉県三郷市の自宅へと帰宅途中だった女子高生(当時17才)が突然、拉致された。
犯行グループの主犯格の少年A(当時18才)は、中学の後輩のB(当時17才)とC(当時15才)、D(当時16才)と共に、たまり場だった東京都足立区綾瀬の住居2階に少女を連れ込んだ。この家はCが両親と同居する自宅だった。
以降、少女は約40日間の監禁生活で、筆舌に尽くしがたい残虐行為の数々を受けることになる。監禁後、少年らは少女の着衣をはぎ取って輪姦し、たばこやシンナーを無理やり吸わせた。抵抗すると罰として陰毛をカミソリで剃り、さまざまな異物を性器に押し込んだ。
12月上旬、少女が隙を見て110番通報を試みると暴行がエスカレートした。少年BとCが少女の顔面を殴り、Aが手足をライターで焼いた。激痛と熱さに彼女が「もう殺してよ!」と泣き叫ぶと、少年らは笑い転げた。
やけどした手足が膿みただれて異臭をはなつと、階下の家人に気づかれないようトイレの使用を禁じて飲料用の紙パックに排尿させ、尿が布団にこぼれるとリンチした。暴行で目の位置がどこかわからないほど腫れ上がった少女の顔を見ても、少年らは「おまえ、でけえ顔になったな」とニヤつくだけだった。