◆視野は20分の1に
愛知工科大学名誉・特任教授の小塚一宏氏の研究によれば、スマホを見ながら自転車を運転した場合、視野は通常の20分の1に低下するという。
「運転中の人間は、無意識のうちに前方左右のさまざまな情報を視認し、本能的に安全確認をしているわけです。しかしスマホを見ながら自転車を運転すると、小さな画面を中心に20~30cm程度の狭い範囲しか見えていない。
5秒間スマホを見ていると、時速10kmと仮定しても14mも進む。その間に歩行者とぶつかれば大変なことになります。ながらスマホがそれほど危険な行為だという認識が、世間に浸透していない」(小塚氏)
6月にも茨城県つくば市で、男子大学生がスマホを操作しながら自転車を運転し、62歳の歩行者をはねて死亡させる事故が起きている。
米澤氏は、同じような被害に遭う高齢者は今後増えていくと危惧している。
「街に出ると、若い子はスマホばかり見ている。私のような高齢者は、歩くのも遅いし、とっさの判断力も鈍い。ながらスマホの人間が前から来たら、こっちが気付いても避け切れない。どこを歩くのも怖くて仕方がない。
にもかかわらず、最近は自転車のハンドルにスマホを付けられる部品が平然と売られている。恐怖をさらに広げているようにしか思えません。例えば、一定以上の速度ではスマホ操作をできなくするような機能を付けてほしいと切に願います」