キャンプ終盤、全行程60kmを徒歩とカヌーで目指す「集大成の旅」(撮影/近藤篤)
◆キャンプに参加すべきは、親の方かもしれない
このサバイバルキャンプ以後、子供たちの顔つきが如実に変わっていった。
崎野さんは親たちへの報告も兼ねて、キャンプの様子を毎日数回Facebookにアップしていた。筆者も毎日チェックし、30日31泊キャンプの集大成となる60kmの徒歩の旅の途中に行われる、カヌーの川下りを取材にも行った。
「カヌーのために、今日まで頑張ってきたんだ!」と、日に焼けて真っ黒な顔たちが笑う。屈託なく、それでいて堂々、やさしい表情になっていたのが印象的だった。
「うちの長男も、キャンプから帰った姿に、『ドラゴンボール』の修行後の悟空みたいだ!とびっくり(笑い)。やたらと落ち着いて別人かと思いました」とは、2013年から2016年にかけて、きょうだい2人をキャンプに送り出した茨城県在住の都竹大輔さん。
「身体的にいうと、0.6まで落ちていた視力が2.0に回復。精神的にも、それまで人の意見に流されてなかなか結論を出せなかった子が、『薬剤師になりたい』と、県内トップの進学校受験を自分で決めて、塾も行かずに合格。つねに成績は学年20位以内をキープしています。私はキャンプ以後、勉強しろと言ったことはないですし、息子から訴えてこない限り、安易に口出しもしません。信頼していますからね」
また現在、「ハローウッズ」の社員で、今回のキャンプにもサポートスタッフとして同行した“オカリョウ”こと岡崎遼さん(21才)も、小学5~6年生とキャンプに参加した“ガキ森”のOBだ。長女も“ガキ森”の卒業生という、母の芳恵さんが語る。
「私も夫も、いい学校に入って大企業に就職する人生よりも、子供には自分で生きる力を身につけてほしかった。中学受験が当たり前の時代ですが、塾の夏期講習に何十万円も使うなら絶対このキャンプだと、息子の意向に大賛成でした。
息子が参加した当時は、チームの半分は問題児。殴り合いのけんかや脱走は茶飯事、サバイバルキャンプでは、あまりの空腹から、虫を捕まえて食べた子もいたようです。息子は、ひとりでもみんなとでも、生きていく術を学ばせてもらった。ハローウッズは心の拠。キャンプ時代のチームメートはきょうだいも同然で、今も強い絆で結ばれているようです」(岡崎さん)
都竹さんも岡崎さんも、1か月子供と離れて初めて、自分が子供に依存していたことや、“親の責任”と言いつつ、実は子供が成長する場所を奪っていたのではないか…と気づいたという。
「30泊31日キャンプで自力で生きる力を体得すべきなのは、もしかしたら、親の方かもしれませんね」(岡崎さん)
※女性セブン2018年9月20日号