「残る土壌はいよいよ二つだ」
貧乏研究者の大旅行につき合っていて、ハラハラ、ドキドキする。土と折り合いをつけて暮らしている人々のなんと多いことか。条件の悪い土を、いかにして有効に機能させるか。その点、日本列島は土からして、すこぶる好条件に恵まれている。それを神を恐れぬ所業で放置していないだろうか。
「作物のタネとは違い、土は融通が利かない」
その上で語られる「地球の土の可能性」。終わりちかくの日本の「田んぼの土のふしぎ」のくだり。「私の郷里の富山県立山町は豪雪地帯だ」。立山町の背後には、立山カルデラの大崩落地が口をあけ、年々歳々、膨大な泥を押し出してくる。この研究者は少年のころ、親たちがため息まじりに土壌をとりざたするのを聞いていて、土にめざめたのかもしれない。
※週刊ポスト2018年9月17日号