NYからビデオメッセージを送ってくれた郭文貴氏
私はさらにアメリカから別の2つの調査チームを派遣し、王が宿泊したホテルをはじめ彼が訪れた様々な場所、殺される前夜に夕食をともにした人など、あらゆる人に聞き取りを行い、より多くの事実を知った。
王の会社であるHNAは単なる航空グループではない。この私の宿敵である王岐山(国家副主席。習近平の政策ブレーン)をはじめ、中国に巣食う盗国賊どもと極めて関係が深い企業である。HNAの隠れた“業務”とは、腐敗した党高官らの隠し子の処遇や、彼らの汚職やマネーロンダリングの手助けをおこなうことであった。
過去、HNAは活発な海外投資によって世界にネットワークを広げてきたが、盗国賊どもはこれを利用し、HNAと共謀して私腹を肥やしてきたのだ。もっとも、従来のHNAが盛んに行ってきた欧米企業の株式買収は、中国国内の大手銀行からの借り入れによるものだった。
明らかになっただけでも約1兆元(16兆円)、実際の負債は2兆元以上にのぼっている(注:中国国内の主要銀行はほぼ無審査でHNAに対して巨額の融資を行い続けたとされる。負債の膨張により、海航集団は2018年に入り経営難に陥っている)。HNAがかつて、渤海金控をはじめとした傘下の企業を通じてコントロールできていた資産は20数兆元の規模にのぼっていた。
王と、HNAのもうひとりの創始者である陳峰は、中国のインテリジェンス機関である国家安全部が重点的に育成してきた人間だ。生前の王は中国共産党の海外におけるスパイ情報網を担っていた。また盗国賊たちへのカネの流れをアレンジする考案者であり、主要な実行者の1人でもあった。