HNAにまつわるスパイ疑惑と金銭スキャンダルは、すでにアメリカをはじめ各国の調査対象ともなっていた。王はそれゆえに口封じとして殺害されたのである。彼の死は、中国の海外におけるスパイ情報網と、腐敗官僚たちの利益を守るうえで必然でもあったのだ。
◆人民元はうさんくさい
本題に入ろう。現在の米中貿易戦争の本質は、貨幣の対決だ。中国共産党は人民元のレートを不当に操作しており、特に中東やアフリカの途上国を対象として、人民元を国際的な決済通貨にせんとの野望を持っている。アメリカ側は、ドルに対する人民元の挑戦が、もはやジョークではなく現在進行形で実施されていることをすでに認識している。
中国が提唱する一帯一路政策が狙うものは、中国共産党の「赤いマネー」である人民元の国際化だ。第二次大戦終結以来の世界の、欧米中心の金融体制を転換させることである。中国による中東やアフリカ・東欧への盛んな進出は、アメリカが予測した以上のスピードでこの目標を現実化させつつあるように見える。
だが、実のところ人民元は極めてうさんくさい通貨である。中国政府の為替コントロールによって、ひとまずレート上では1ドルは6.8元ほどであるが、これが価値の実態を反映していないことは誰の目にも明らかだ。
人民元とは、政治的コントロールを受けた偽りの通貨であって、そんなものが国際通貨としての地位を得ていくことは人類にとっての不幸でしかない。中国共産党は、この偽りの通貨を用いて、世界の経済を中国の利益に合致させるための革命をおこなおうとしている。歯止めを掛けなくてはならない。