十年ほどの時間が流れてゆく。そのあいだに東日本大震災がある。朝子は亮平と、宮城県にボランティアとして地元の朝市の手伝いをする。
朝子がもう麦のことを忘れたかと思われた時、またしても突然、麦が現われる。世界放浪をしていたという。日本に戻ってきて、モデルとして成功した。麦と再会して朝子の気持が揺れる。非日常の魔物が顔を出す。
そして、朝子は思いもよらない行動をとる。この先を詳しく書くことは控えるが、朝子の行動は観客には、とりわけ女性の観客には反発を買うかもしれない。自分勝手と思われるかもしれない。
なぜ、そんな行動を朝子はとるのか。おそらく朝子自身、なぜかは説明出来ないのではないか。恋愛という魔物に取り憑かれたとしかいいようがない。大仰にいえば病気。朝子は病気になると麦に惹かれ、治ると亮平のところへ戻ろうとする。恋愛に振りまわされている。
一見、純愛映画のように見えながら恋愛の怖さをよくとらえている。
◆文/川本三郎
※SAPIO2018年9・10月号