国内

敬老の日に施設を慰問、紙芝居や手品を披露したNPOの正体

介護を受ける人の家族も高齢化している

 1960年に女性70歳、男性65歳だった平均寿命が、今では女性が87.26歳、男性が81.09歳になった。敬老の日の過ごし方も、昔のようにはいかないらしい。ライターの森鷹久氏が、敬老の日をめぐる混乱と、それに振り回された人々の様子をレポートする。

 * * *
「何がめでたいんだよ、バカにするのもいい加減にしてくれんか!」

 千葉県某市の高齢者福祉施設に、入居者の女性・Aさん(99歳)の精いっぱいの怒声が力なく響き渡る。敬老の日を一週間後に控えたその日、施設の責任者がこのAさんの他に二人の入居者とその家族を呼び寄せて、とある「説明」を行っていたのだが、事態は予期せぬ方向に動いた。

「Aさんは今年100歳、他の二人も同様で、市の担当者が敬老の日に100歳のお祝いをしたいといって来られたんです。慶事だし、ご家族も納得されていたようですが、Aさんが急に怒り出したんです。施設にはテレビの取材も入るかもしれないということで、私どもはその日を楽しみにしていたのですが…。結局、Aさんに流されるように他お二人の家族からも“遠慮します”と言われて…」(施設責任者の男性)

「敬老の日」と言えば、文字通り「老人を敬う日」だと考えていたのは筆者だけではないはずだ。子供のころ、敬老の日には祖父母に何かプレゼントをしてみたり(それは肩叩き券、のような類のものではあったが…)、中高生になれば敬老の日の前後にクラスや部活動のメンバーなどで老人施設を訪れては、入居者と交流させてもらったりした。それらが概ね「おじいちゃんおばあちゃん長生きしてね」というニュアンスの元に行われていたことは疑うまでもない。

 今日ではどうだろうか。敬老の日当日、ほとんどのニュースでは「日本の高齢化がさらに進んだ」「70歳以上が人口の20パーセントを超えた」としか報じられず「長生きしてね」といったニュアンスが薄まっていることがわかる。敬老の日は「祝日」であり、おめでたい日であったにもかかわらず、だ。高齢化が進んだ、70歳以上が人口の多くを占めるようになった…に続く言葉はニュースの中で語られないが、その先には悲観的な言葉しかないこともまた、今や国民の多くが理解していることかもしれない。

 前出のAさんの怒りは、そうした国民感情を理解していたからこそ、自身が家族にとって「重荷になっている」と認識していたからこそに飛び出た叫びなのか。施設の介護士は、目に涙を浮かべながらAさんへの思いを吐露する。

「Aさんは八十代後半から施設にいらっしゃいますが、最近では一人で食事を摂ることもできないほど。以前はご家族の方も頻繁においででしたが、この数年は誰もいらっしゃいません。冷たい家族、ということではなく、ご家族も高齢なんですね。Aさん、決して気難しいとかわがままを言う方ではないのですが、生きていてもしょうがない、なぜ殺してくれないのか、と最近は本当に落ち込んでいらして…。敬老の日、百寿のお祝いのお話をした時も”本当は誰も祝っていないんじゃないか”とこぼされていたんです。

 実は以前、施設長がAさんに施設を変わってくれと打診したことがあり“追い出すんですか”とトラブルになっていましたから、都合のいい時だけ担いで…というお気持ちだったんでしょう」(施設の介護士)

 ところ変わって、東京都内のデイサービス施設でも、敬老の日の会合が行われていた。敬老の日は祝日でデイサービスが休みの為、慰問は平日に前倒しで行われていたというが…。

「お祝い会を行おうということで、入居者のご家族にもお電話やはがきでお知らせしたのですが…。みなさんお忙しいのか、ほとんど来られなかったですね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン