◆「採用ルールの廃止」はチャンス
一方、わが国では大半の企業が新卒採用で、それも学歴と面接、それに簡単な適性検査くらいで採用を決めている。なかには選考は形式だけで、「一流」大学卒であれば実質無条件で採用しているところもある。
要するに、仕事能力はまったく未知数なわけだ。にもかかわらず、いったん採用したら容易に解雇できない。だからこそ社員を「子ども扱い」せざるを得ないし、社内で育成する代わりに管理も厳しくなるわけである。
しかし、残念なことにそれが優秀な人材を日本企業から遠ざけている。欧米や韓国、中国などへの頭脳流失が起きているし、近年は仕事と直接関係のない部分で束縛されたり、気を遣ったりすることに嫌気がさし、会社を辞めていく若者も多い。
周知のように先日、経団連の会長が採用ルールの廃止について言及した。そうなると当然、長年続いてきた新卒一括採用は崩れる。各企業は好むと好まざるとにかかわらず、新たな採用方法を取り入れなければならない。
考えようによれば、これは本来あるべき姿へ転換する絶好のチャンスである。一人ひとりの仕事能力と適性を確かめたうえで採用すれば、信頼して仕事を任せることもできるので、細かい管理で自主性やモチベーションをそいでしまうリスクは下がるし、管理コストも減少するはずだ。また本格的なAI時代を迎え、業種を問わず、イノベーションや創造的なアイデアを引き出せるようなマネジメントが必要になってくる。
かつて日本企業でも働いた経験のある現地の人、数人が奇しくも同じことを口にしていた。「日本人は会社にいることが仕事だと思っている」と。古い時代のホワイトカラー像がいまだに消えないのだ。本来の「仕事」にフォーカスすることで、「働き方改革」の方向も自ずと定まってくるのではなかろうか。