鳥貴族にとっては、298円という均一価格の中で、いかに“お得感”を出すことができるか──これが商品戦略のすべてだ。もちろん、メニューによって原価比率はまちまちなので、原価の安いものは量を多くするなどして付加価値を出せなければ売れない商品になってしまう。
ちょうどいま、お得感を前面に打ち出しているのは、通常サイズの倍の量、高さ17cmの巨大ジョッキで提供される「メガハイボール」だ。もちろん価格は298円。10月17日までのキャンペーン商品とはいえ、とにかくお酒をたくさん飲みたい人にとってコスパは最強だろう。
だが、均一価格の「売り」や値上げ分の付加価値を訴求するだけのこうした戦略は、そろそろ消費者に飽きられ始めているのも事実だろう。
もともと鳥貴族は従業員の作業効率やコスト削減のためにメニュー数を増やさず、新商品の入れ替えも頻繁に行わない方針を貫いてきた。それは国産の食材を100%使用するなど、品質・サービスに自信を持っているからできることで、専門居酒屋の強みでもあるのは確かだが、顧客にとっては新鮮さが薄れかねない。そのうえ、値上げや増量によってメニューの選択肢を一層狭める悪循環に陥っているようにも見える。
あの好調な100円均一ショップでさえ、厳しい商品構成の目が求められている。これまでは100円という価格設定の分かりやすさと豊富な品揃えさえしていれば売り上げはついてきたが、いまや価格に敏感な消費者が増えたため、100円とはいえ本当に価値のある商品しか売れなくなっている。その結果、商品の入れ替えや新商品開発のスピードはますます速くなっている。
もっとも、値ごろ感は二の次で、品質の高い商品が欲しい場合は、100円以上でも賢く買い分ける人は多い。依然、低価格志向は根強いものの、自分へのご褒美消費や贅沢消費という「消費の二極化」が起きているのだ。
そこで、店側も価格に縛られていては、本当に価値ある商品展開ができない。そのため、最近の100円ショップでは、100円均一にとらわれず、商品によっては200円、300円のラインアップも品揃えに加えている。