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鳥貴族の客離れは値上げだけが要因か 均一価格戦略に陰りも

「焼き鳥戦争」過熱で同じビルに競合店が入居しているケースも

 主力の焼き鳥メニューだけでなく、つまみもビールもサワーもすべて「280円均一」。まさに“飛ぶ鳥を落とす”勢いで成長してきた「鳥貴族」が、ここにきて足踏みしている。昨年10月に全品一律280円から298円(いずれも税抜き)に値上げしたことで、客数が落ち込んでいるのだ。しかし、1品18円の値上げだけが本当に客離れの要因なのか。フードアナリストの重盛高雄氏が現場レポートする。

 * * *
 日本フードサービス協会のデータによると、居酒屋業態における7月の客数は前年比94.3%、客単価は同99.0%となっている。ここ数年、何でもありの「総合居酒屋」が振るわない中で、焼き鳥や魚料理などに特化した「専門居酒屋」が健闘していたため、落ち込みを最小限に食い止めていた。

 ところが、直近の数字を見る限り、専門居酒屋の状況も芳しくない。特に均一価格の焼き鳥居酒屋チェーン「鳥貴族」の落ち込みは顕著だ。

 同社の月次報告によると、値上げの効果か客単価こそ昨年10月よりずっと前年同月比でプラスが続いているが、その反面、既存店の客数減が止まらない状況に陥ってしまった。昨年12月より客数は100%を越せない苦境が続き、直近7月の客数も85.8%という結果に終わった──。

 鳥貴族の誕生は1985年。創業者の大倉忠司社長が大阪(近鉄俊徳道駅前)に1号店を開業。その後、大阪・道頓堀店の人気をきっかけに、2005年に東京進出。店舗数、売り上げともに右肩上がりで伸び、2018年8月現在の店舗数はじつに666店舗(2018年8月現在)、売上高は339億円にまで拡大した。2016年には東証1部上場も果たしている。

 急成長の理由は、なんといっても「280円均一」という料金体系にあったのは言うまでもない。創業当初は150円、250円、350円と3段階の価格設定をしていたが、「店のコンセプトがぼやけてしまう」(大倉社長)と、思い切って全品250円均一に。そして、1989年の消費税導入を機に値上げし、280円均一に落ち着いた。

 看板メニューには、普通の焼き鳥の1.5倍もの大きさがある「貴族焼」や、注文を受けてから一つずつ釜で焼く「とり釜めし」、もちろんアルコール類もビールやハイボール、ワインなど何を飲んでも280円だ。また、おかわり自由の「キャベツ盛」や「北海道産和風ポテトさらだ」などのスピードメニューは、女性客やファミリー客にも定番人気となっている。

 だが、昨年10月、これまで28年続けてきた280円均一の看板を掛け替え、創業以来2度目となる値上げに踏み切った。それが要因で客足が遠のいているとの情報を受け、筆者は週末の店舗に足を運んでみた。1品18円の値上げがそこまで消費者の負担になっているのか、実際に確かめたかったからだ。

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