技術の進歩もあり、ひと昔前に比べれば冷凍食品のイメージ、ラインナップは様変わりし、われわれの食生活にしっかりと根付いている。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がレポートする。
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日本社会の高齢化や人口減少が続くなか、「中食」市場が賑わっている。とりわけ好調なのが冷凍調理食品だ。家庭での調理が難しくなった高齢者をはじめ、誰もが電子レンジで温めれば作りたてに近い味が味わえる。総務省の家計調査(総世帯)でも、2008年から9年連続で冷凍食品の家計消費支出が伸びている。
冷凍食品が本格的に国内で普及し始めたのは、1964(昭和39)年に開催された前回の東京オリンピックでのこと。さまざまなホテルやレストランで使われたことで利用範囲が拡大。1970年代にはブームとなった「外食」向けに。1980年代には家庭向け冷蔵庫に冷凍庫が備わり、家庭向けの冷凍食品が続々登場するようになる。
1980年代にはピラフ、グラタン、焼きおにぎりなどの軽食カテゴリーの冷凍食品が登場。その後、冷凍さぬきうどんのような主食カテゴリーからコロッケ、冷凍パンなどこの数十年で冷凍食品は急速に進化してきた。ライフスタイルの変化がそのまま、冷凍食品の進化につながっている。
先行する冷凍食品メーカーは、より企画性の鮮明なシリーズを投入している。近年、活気があるのが、家飲み需要に向けたおつまみ展開だ。味の素冷凍食品は今年2月から「夜九時のひとり呑み」シリーズを売り出した。昨年の同社の調査によれば、成人人口の35%が週1回以上、家庭で飲酒をし、その半数が「ひとり呑み」をしていると判明。その層に向けて少量パッケージのおつまみ冷凍食品を発信していく。
日本水産の「おうちおつまみ」シリーズのように明確に「おつまみ」を充実させるメーカーも増えた。さらに各コンビニのプライベートブランド(PB)商品にも、おつまみ仕様アイテムが充実してきている。「おつまみ需要」が冷凍食品という既存マーケットを掘り起こす牽引車となっている。
そして最大のマーケットが高齢者、共働き向けの需要だ。特に老老介護や独居老人の場合、ガスコンロの使用には消し忘れなどの危険が伴い、慣れないIHクッキングヒーターには使いにくさが伴う。だが電子レンジ調理対応の冷凍食品ならば、日持ちもして必要な栄養も摂取できる。共働き家庭のおかず需要なども相まって、食卓の「食事」需要が高まっている。弁当需要は少子化の影響で頭打ちだが、セットで語られる「高齢化」が冷凍食品メーカーにとっての活路となりつつあるのは皮肉なところだ。