週刊ポスト読者が選んだ「好きな野球漫画」(11位以下)
そしてもう一つ、“その手があったか”と世間を唸らせたのが、『プレイボール2』である。同作は新設定、新キャラクターを出さないという、ちばあきお氏のタッチや世界観を壊さないことを念頭に進行している。
「スピンオフだったらオリジナルとまったく違うものを描いてもOKですけど、続編となると話は別です。『プレイボール2』のお話をいただいたとき、最初は谷口くんを監督にする設定を考えましたが、やっぱりちばあきお先生のタッチで最終回の続きからやるのがみんな満足してくれるのではないかと思い、現在の形にした。コアなファンからは“全然違う”とか“似てない”などと言われることもありますが、想定の範囲内。アンチが多いほど、しっかり読んでくれている証拠と捉えています」
連載開始時は各メディアに取り上げられるなど話題沸騰。名作とはいえ38年前の未完作品の続編がこんなに騒がれるとは思わなかったという。これも野球漫画というジャンルの強みなのだろう。なぜ野球漫画はいつまでも廃れず、新作が出続け、人気が続くのだろうか。
「昭和40年代中盤に、才能ある作家たちがたくさんいたからだと思います。少年漫画がエンターテインメントの中心だった時代に、数多くの才能ある作家たちが30代という一番脂が乗る時期を迎え、競い合うように野球漫画を描いていた。『ドカベン』や『キャプテン』などが代表的ですね。いくら素晴らしい才能があっても競合する才能がないと“孤高”となり全体が盛り上がらない。これはいわば漫画界の偶然でしょう。それをその後のクリエイターが追いかけて、読者も魅了され、野球漫画というジャンルが確立されていったんだと思います」
取材・文■松永多佳倫
※週刊ポスト2018年10月12・19日号