貂々:苦しみは変わらなかった?
早霧:舞台に生きる限り、稽古がある限り、そうはいきませんね(笑い)。でも、私が救われたなと思うのは、ずっと稽古中じゃなくて、必ず初日が来ること。そこでお客さまの反響だったり、喜んでくださっているのを感じると、苦しんでいたときが消しゴムで消えていくように、暗闇がほんとに明るくなっていくんですよ。人からもらうエネルギーっていうんですか、「楽しんでます」と言ってもらえたり、拍手をいただくと、ああ、やっていてよかったなって思うんです。
貂々:私のネガティブとは、ちょっと違うような気がしますね。
早霧:理想があるのに、その理想に手が届かないっていうところに自分ではもどかしさを感じていて、そこに行き着けないネガティブはずっと抱えて稽古をしています。もはや人生修業みたいなものですね。
貂々:せりふを覚えたり、体をつくったりという作業は孤独だと思うんですが、ネガティブは孤独ともつながっているんでしょうか?
早霧:宝塚ではトップスターは孤独だとかよくいわれるんですよ。でも、私は全然感じなかった。辞めてからの方が感じましたね。なぜって、宝塚はわかり合える仲間がいたんです。立ち回りにしても同じ女性なので、「きついよね」と声をかけ合える。でも、今回の舞台みたいに、立ち回りは女性では私だけですから、なかなかわかり合えないと思って、愚痴は自分だけにぼろぼろと(笑い)。そんなときに、この『お多福来い来い』を読んで、元気をもらっています。持っているだけで幸せになれそう。
貂々:ありがとうございます。もう今日が終わってもいいです(笑い)。あと、誕生日が近いんですけど。私は9月16日で…。
早霧:えっ、私は9月18日。
貂々:同じ乙女座。ロマンチストなんていわれますけど…。
早霧:全然ロマンチストじゃないですよ。どうですか?
貂々:私も現実的なんです。
早霧:そう、めちゃめちゃ現実的です(笑い)。
貂々:今日はちぎさんとの共通点も見つかって、幸せな時間でした。『るろうに剣心』、楽しみにしていますね。
早霧:ありがとうございます。今後とも宝塚のことも応援し続けてください。
貂々:もちろんです!(笑い)
※女性セブン2018年10月18日号