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樋田淳也容疑者の逃走劇の裏に「示差性」「正常性バイアス」

48日間も逃げ延びた樋田淳也容疑者

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人やトピックスをピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、盗んだ自転車で逃亡中、素顔で写真撮影に応じるなど大胆な逃走劇で話題となった樋田(ひだ)淳也容疑者を分析。

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 大阪府警富田林署から脱走し、加重逃走容疑で逮捕された樋田淳也容疑者の逃走経路や状況が明らかになってきた。山口県周南市、食料品を万引きし、山口県警に現行犯逮捕された樋田容疑者の姿に驚いた人も多かったことだろう。

 なぜならその姿は、大阪府警が公開していた写真とは印象が大きく違ったからだ。白い顔は真っ黒に日焼けし、長い髪は短く刈り込まれ、あごと口にひげを生やし、風貌が変わっていた。それでも、毎日のように情報番組やニュースで公開された写真が流れていたのだから、自分ならきっとわかったはずと思う人もいるだろう。ところが実際は、万引きで逮捕されるまで、樋田容疑者は発見されなかったのだ。

人は、相手の顔や顔写真を見た時、その人の特徴的な部分を記憶しやすく、それによって相手の顔を再認する。また無意識のうちに、その特徴をデフォルメしたり、自分がイメージする方向に相手の顔を調整するという、認知的な偏りであるバイアスを持っているため、同じ顔と認識するのが難しくなる。

 もう1つ、顔認識における「示差性」の低さが関係していると思うのだ。示差性とは、顔の目立ちやすさの程度のことである。示差性が高ければ人ごみの中で目立つが、樋田容疑者の顔は目立ちやすいとは言えない。だが、示差性が低い顔は、表情を変えることで、顔の特徴すら変えてしまうのだ。逃走犯と聞けば、人目を避け、帽子を深く被り、下を向いて歩いてるようなイメージが強い。だが、樋田容疑者と自転車で同行し逮捕された男性によると、彼は人懐っこくよく喋ったという。残された写真を見ても、表情は明るく、出会った人たちとも交流していたようだ。そのため樋田容疑者を前にしても、公開された写真と目の前の人物が同一人物だとは誰も気付かなかったのだ。

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