ゲスト声優の広瀬アリスと月にちなんでウサ耳姿のドラえもん
とはいえ、自分の小説とは勝手が違う部分もかなりあったため、描写に苦労したところもある。とくに、映画ドラえもんにはつきものの、戦いや動きの多い場面には苦労した。
「私の小説にはアクションがあまりないので、どうしたらいいんだろうと思っていました。そのときは、毎週、うちの子供たちが楽しみにしているドラえもんを一緒に見て、声優さんたちの声の伸びやかさや動きを見て、イメージを助けてもらいました」
映画の脚本でも小説でも、辻村氏は、故・藤子・F・不二雄氏が大切にした、子供が面白いと思うものだからこそ、科学的な裏付けには手を抜かないという側面も丁寧になぞった。
「私が藤子先生の作品をみたときに、やっぱりハードSFの側面が大好きなんですね。実際に、月や地底に行ったらどうなるのか、という科学的な事実をおろそかにしない。今回の作品では、そういった面も気を配りました。もちろん、月にはかわいい生き物がいて、ひみつ道具で何でもできる素敵な世界観のなかにドラえもんたちはいます」
きっかけは何でもいい、映画ドラえもんをきっかけに、子供たちには「月の向こうに誰かがいるんじゃないかと、そんなふうに月を身近に感じてもらえたら嬉しい」と辻村氏は言う。来年、シリーズ39作目として登場するドラえもんは、これまでのドラえもんと同じように、大人でも、子供でも、楽しく面白い話の続きになっているのは間違いなさそうだ。
●写真/藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2019