この法改正の背景には、別の事情もあるとみられている。故人の口座が凍結されて、葬儀費用や入院費用の支払いなど出費が重なると、手元資金に余裕のない相続人は、遺産分割協議を早く終わらせて遺産を手にしたいという思考になりがちだ。
話し合いさえまとまれば、自分の相続分が受け取れるので、当然の心理だろう。だが、資金に余裕のある相続人が遺産分割協議を意図的に長引かせようとするケースがある。それにより、相手の譲歩を引き出し、自分に有利な条件で遺産分割を進めようとするのだ。
今回の法改正は、こうした“持てる者の策略”に歯止めをかけることにもつながると考えられている。
※週刊ポスト2018年10月26日号