しかし、遺産分割協議がこじれて凍結が長期化すると、故人の配偶者が生活に困窮する状況も生まれ得る。
そのため、これまでも、家庭裁判所に仮分割の仮処分を申し立てれば、他の相続人の利益を害しない範囲で、最高1000万円まで家裁が預貯金の仮払いを認めてきた。ただし、この方法は家裁への申し立てが必要で、手間も時間もかかる。
そこで、来年1月から施行される改正民法では、家裁の判断を待たなくても、法定相続分の3分の1まで、または法務省令で定められた額まで、預金が引き出せるようになった。
たとえば、父親が亡くなり、その口座に600万円入っていて、相続人が母親と子供2人だったとすると、配偶者である母親の法定相続分は600万円の2分の1の300万円。その3分の1にあたる100万円までが引き出せる。子供は1人50万円までだ。前出の北村氏がいう。
「法務省令の内容はこれから決まっていきますが、引き出せる上限は100万円になるとみられています。この金額であれば、後の相続の話し合いに大きな影響を及ぼさない範囲ですし、かつ葬儀などの費用を賄える程度になる」
施行前なので、具体的にどういう申請の仕方になるかははっきりしていない。基本的には金融機関の判断で引き出しを認められるようになるので、名義人の死亡を届け出たあと、窓口で手続きを踏むだけで“凍結口座”からお金をおろせるようになると考えられる。
◆分割協議の流れも変わる