改正前は、実務的には「一生分」がその対象となった。弟からすれば、数十年前に遡ってでも、兄が贈与されている財産が見つかれば、それだけ遺留分が増える。そのため、疑り合いが長期化することもあった。
そこで、今回の改正により、遺留分を計算する上での贈与の対象期間は10年に限定された。円満相続税理士法人の代表・橘慶太氏が解説する。
「これは推測ですが、10年というのは、銀行の取引履歴の保管期限と符合します。手元に通帳がなくても、手数料はかかりますが10年分の履歴を出してもらえる。その期間のみが遺留分の対象ということになれば、話は早くまとまる」
前述のケースで、兄弟の父親が亡くなるまでの20年の間に、兄が毎年100万円ずつ、計2000万円生前贈与されていたとする。すると、遺留分を計算する際の財産の総額は、改正前なら生前贈与された20年分がすべて含まれ4000万円。弟が遺留分として受け取れるのは1000万円だった。
だが、改正後は10年以上前の贈与分は含まれないため、遺留分は750万円だ。弟は受け取れるお金が目減りした。
異議申し立てをする側にとっては、不利なルール変更に思えるが、トラブルの早期解決につながるというメリットをしっかりと押さえておきたい。
※週刊ポスト2018年10月26日号