国内

目黒女児虐待死、引越し後の「児相の引き継ぎ」に問題あった

結愛ちゃん事件の経緯

 東京目黒区のアパートで両親に虐待されて亡くなった船戸結愛ちゃん(当時5才)。母親の船戸優里被告(26才)と父親の船戸雄大被告(33才)は保護責任者遺棄致死の罪で起訴されている。10月3日、厚労省の専門委員会がこの事件を検証し、まとめた報告書を発表した。23ページにわたる報告書では、児童相談所(以下、児相)の引き継ぎなど問題点を指摘している。

 結愛ちゃんは、優里と前夫との子供だ。優里が離婚後、雄大と出会い、地元である香川県善通寺市のアパートで3人で暮らすようになったのは2015年11月だった。しかし、優里が雄大と再婚した直後から、雄大による虐待が始まっていたという。

 2016年の夏、優里は雄大の実子である、長男を妊娠した。近隣住民から香川の児相に初めて結愛ちゃんの泣き声が通告されたのも同時期だった。児相により幼稚園への見守りも依頼されたが、虐待は止まらず、弟が生まれてからはさらにひどくなる。

 12月、結愛ちゃんが寒空の下、裸足にパジャマ姿で雄大から叩かれ屋外に出されていたところを近隣住人が発見し、警察に通報。12月26日、児相に一時保護された。

「“パパ怖い”と震えていたそうです。頭にはこぶができ、出血もあって1か月くらい児相に保護されていました。帰ってきた後は、近所も結愛ちゃんの様子を気にかけていました」(近所の住人)

 しかし翌3月には再びアパートの外で口から出血する結愛ちゃんの姿が見つかり、2回目の一時保護の措置がとられた。4か月の保護期間中、「パパ、ママいらん」と言いながらも「家に帰りたい」と口にすることもあった。

 幼稚園も見守り態勢を強化。児相も家庭訪問や定期的に医療センターに通院するよう促すなど結愛ちゃんの様子を見守った。8月に医療センターでのけがが見つかった際、「パパにやられた、ママもいた」と結愛ちゃんは話したが、優里は否定。一時保護措置はとられなかった。

 その後も医療機関と児相による結愛ちゃんの見守りは続いたが、2018年に入ってすぐに、近隣の誰にも転居先を知らせることなく、一家は東京・目黒に引っ越してしまう。

◆雄大は書類送検されたこともあった

 雄大は当時勤めていた会社を退社した理由について、同僚に「結愛ちゃんが小学校に入学する前に東京へ行って、いろいろなことを経験させて将来の可能性を広げたい」と語っていたという。この事件の専門委員会の代表であり、関西大学人間健康学部教授の山縣文治さんが解説する。

「転居の本当の理由は、児相と警察が頻繁に動いている状況を危険視したからでしょう。実際、雄大は2017年2月に書類送検されている。次に虐待が明るみに出る前に逃げなければという気持ちだったのだと思われます」

 香川の児相はこれを危険視し、引っ越し先をつきとめ、すぐに管轄である品川の児相に連絡をする。

 職員の必死さは伝わる。しかしその努力もむなしく、結愛ちゃんは転居から2か月もたたないうちに亡くなった。報告書は一時保護を解除したこと、また転居の際の引き継ぎについて問題があったと指摘している。解除については、以下のように問題点を挙げている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
8月20日・神戸市のマンションで女性が刺殺される事件が発生した(右/時事通信フォト)
《神戸市・24歳女性刺殺》「エレベーターの前に血溜まり、女性の靴が片方だけ…」オートロックを突破し数分で逃走、片山恵さん(24)を襲った悲劇の“緊迫の一部始終”
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
決勝の相手は智弁和歌山。奇しくも当時のキャプテンは中谷仁で、現在、母校の監督をしている点でも両者は共通する
1997年夏の甲子園で820球を投げた平安・川口知哉 プロ入り後の不調について「あの夏の代償はまったくなかった。自分に実力がなかっただけ」
週刊ポスト
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
【観光客が熊に餌を…】羅臼岳クマ事故でべテランハンターが指摘する“過酷すぎる駆除活動”「日当8000円、労災もなし、人のためでも限界」
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン