これまで、がん治療においては「外科手術」と、抗がん剤などを用いた「化学療法」、そして「放射線治療」が三本柱と言われてきた。その3つを、がんの部位や進行具合によって組み合わせるのが一般的だった。
本庶氏の研究が開発に大きく貢献したオプジーボは、そこに加わる第4の「がん免疫治療」の薬として国内外から大きな期待を集めている。
◆免疫細胞のブレーキを外す
がん免疫治療とは、大まかに言えば人間がもともと体内に持っている免疫機能を正常に働かせることで、がんを治そうとする考えに基づいた治療だ。医療ジャーナリストの松井宏夫氏が解説する。
「健康な人でも、体内では毎日5000個のがん細胞が生まれていると言われています。それでも、『がん』と診断されないのは、免疫細胞ががん細胞を異物とみなして攻撃し、死滅させているからです。
免疫細胞が正常に機能している場合は問題ありませんが、がん細胞が学習し、自分を攻撃する免疫細胞にブレーキをかけるようになる場合がある。すると、体内ではがん細胞が爆発的に増えてしまい、がんが進行します」
オプジーボは、『免疫チェックポイント阻害薬』の1つに分類される。がん細胞は『PD-L1』という分子を、免疫細胞は『PD-1』という分子を持っており、2つが結合すると、免疫細胞は活動が抑えられ、がん細胞を攻撃できなくなる。この対応関係を免疫チェックポイントと呼ぶ。オプジーボが、双方の結合を阻害することで、免疫細胞が再びがん細胞に対して攻撃を始めることが可能になる。