「面接の時、希林さんには『この事務所に入ったからといって次から次に仕事が来ることはないけど大丈夫?』と聞かれました。その頃は『まあ、なんとかなるだろう』というぐらいの感じだったので、『大丈夫です』と言ったんです。そうしたら、本当に最初の二、三年は一年に一度ぐらいしか仕事がなくて。

 そういう感じで入ったので、演技の勉強はしてないんです。久世さんも『何も勉強はしないでいい。ただ、一つは一生懸命にやる。一つは役の気持ちを理解してからやる。せりふ回しは下手でもいい』みたいなことしか言いませんでした。もう三十歳ぐらいでしたから『技術の勉強をやってもダメだろう』と思われていたのかもしれません。

『世の中をもっと見ればいい』とは別の人に言われましたね。ザ・タイガースの頃は五十メートルの移動もタクシーに乗るような生活を長くしていましたから。ですから、人間観察が俳優には大事なんだということを皆さん僕に言おうとしていたんだと思うんですよね。

 希林さんには、俳優としての生き方の影響を受けました。『俳優は特別な仕事ではない。どんな職業にいようが、その職業を通して人間としてのレベルをどう上げていくか』という話を希林さんはされていました。あの人の最期を見たら、確かに見事だった。そこまでご自身を高めていったんだな、と思いました」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

■撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2018年11月16日号

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