パリの外郭となる環状線の近くのカフェで、パリジャンの朝の出勤の様子を眺めていれば、数分ごとに電動キックボードが通り過ぎます。若者だけでなく、年配の女性にも利用者がいました。
走るのは自転車用の走行レーン。パリは車道や歩道の一部に自転車走行レーンが存在します。そこにボンヤリと立っていると、自転車の人に怒られるほど、自転車用走行レーンの存在は当たり前。そこを電動のキックボードがのんびりした自転車と近いスピードで走行しています。
キックボードなので、スカートやコート姿でもOKですし、そのまま持って地下鉄やバスにも乗れます。地下鉄から降りたら、また電動キックボードで移動。なかなか便利そう。さすが、シェアリングの盛んなパリだ! と感心することしきり。これは世界中で流行するのではないでしょうか。
「日本にも導入されれば……」と一瞬、頭をよぎりましたが、冷静に考えてみると相当に難しいことに気づきます。
まず、日本では、電動キックボードが、そのまま公道を走ることはできません。もしも走るのであれば、原動機付自転車(いわゆる原付バイク)と同じ扱いになりますから、ライトやウインカー、ミラーが必要になります。乗る人には、運転免許証が必要で、しかもヘルメットも着用しなくてはなりません。
もちろん走るのは、自動車と同じ道路。パリのように自転車と同じように扱うことができないのです。これでは、もしも導入されても、面倒くさくて利用する人は、ほとんどいないでしょう。同じサービスでも、地域の事情によってフィットしないことも十分にあるという例ですね。
ただし、世界中でシェアリング・サービスが増加しているのは確かで、日本でもその傾向はみられます。自転車だけでなく、電鉄会社や自動車会社によるシェアリングの実証実験が数多く行われています。日本には、どのようなシェアリング・サービスが普及するのか。今後に注目です。
■撮影/鈴木ケンイチ