◆法に追いやられた人の人権は?
助け合いの側面だけでなく、〈奈落〉と言わざるをえない深刻なケースも紹介される。遊興費で多額の借金を抱え、地方都市に〈出稼ぎ〉させられる女性などは、現代の〈人身売買〉とでもいうべき状況だろう。若いときは稼げたが、この世界から抜けられないまま40代、50代になった人の切実な不安の声が「風テラス」に届くこともある。
あらゆるものを〈現金化〉でき、源氏名という〈匿名化〉に守られている世界は逆に、女性たちがその世界を抜け出た後も〈アウティング〉(=暴露)の危険にさらされる世界でもある。SNSをめぐるトラブルや、店を辞めたのでホームページから顔写真を削除してほしい、といった相談も多い。問題が多すぎて、〈そもそも何に困っているのか自体が分からない〉人もいるというが、そういう場合でも、相談員はできることから一つずつ片づけていくことを提案するそうだ。
「弁護士やソーシャルワーカーが入ればそれで全部、問題解決と思う人もいるかもしれないけど、そうではありません。ニヒリスティックに受けとられるかもしれませんが、多重化した困難をきれいに一刀両断する『快刀=解答』なんてどこにもない。
『快刀』をほしがる人と、これが『快刀』だって思わせたがる人はたくさんいますけど。風俗と司法と福祉が連携しても救えない領域というのは絶対あって、そういう領域があるとはっきりさせただけでも、連携した意味はあると思います」
風俗で起きていることを福祉や司法の人に翻訳して伝えることも目的のひとつ。多重化した問題を抱える人の〈多くのニーズは縦割り制度の谷間や隙間に落ち込んでしまう〉現状を明らかにしたうえで、そうした人たちへの支援をどうするかがこれからの課題だ。