国内

ゴーン容疑者が不正に走ったきっかけ「アンカリング効果」

「カリスマ経営者」から一転

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人やトピックスをピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン容疑者を分析。

 * * *
 それにしても桁違いの額である。庶民感覚からすれば、申告していた報酬でさえすごい額なのに、過少に記載していた5年間の役員報酬がなんと約50億にものぼるというのだ。

 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が11月19日、役員報酬を有価証券報告書に過少に記載したとして、金融商品取引法違反容疑で逮捕された。ニュース番組やワイドショーでは、カリスマ経営者として報道してきた司会者らが、同じ人物を「容疑者」と呼ばなければならなくなった複雑な心境を、口々に吐露していたのが印象的だった。

 ゴーン容疑者の報酬については、これまでも度々、高すぎると批判されてきた。コストカッターとしていくつもの工場を閉鎖し、2万人以上の人員を削減、そうして業績をV字回復させた手腕は見事だが、それだけに失望も大きい。

 特に2010年3月期決算以降、年間1億円以上の報酬を受けとった役員の名前と金額が開示されるようになり、日産の株主総会で彼の報酬が公表された時は、その高額さに驚いた。だがゴーン容疑者は、「グローバル企業としては高くない水準」と批判を一蹴。この時彼の中では、日本企業の経営者ではなく、彼がそれまで見てきたグロ―バル水準の数字が、自らの報酬額を決める判断基準になっていたのだろう。

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