家から学校まで1.5kmの距離を、徒歩で往復するとしよう。行きは時速5km、帰りは時速3kmで歩いたとすると、往復で平均の速さはどれくらいだっただろうか。この問題では、あわてて算術平均をして、時速4kmと答えてはいけない。
まず、往復にかかった時間を考えてみる。1.5kmを、時速5km、3kmで割り算してみる。行きは0.3時間、帰りは0.5時間かかったことになる。つまり、往復で3kmの距離を、0.8時間かけて歩いたことになるから、3kmを0.8時間で割り算して、平均の速さは、時速3.75kmとなる。これは、「調和平均(※注)」と呼ばれる。
【※注/実は、この問題では、家から学校までの距離が1.5kmでなくても、調和平均は変わらない。調和平均を割り算で求めるときに、往復の距離3km(割られる数)と、往復の時間0.8時間(割る数)は、ともに片道の距離1.5kmによって決まっている。このため、割り算をすると、互いに打ち消しあうのだ】
さらに、あるデータをとったときに、各データの算術平均からの乖離がどれくらいあるかという、データのブレについて平均をとることを考えてみよう。ブレの平均をとるときには、算術平均ではうまくいかない。
たとえば、身長が1.6、1.7、1.8mのAさん、Bさん、Cさんの3人について、ブレの平均を考えてみよう。この3人の平均身長は1.7mなので、ブレは、Aさんはマイナス0.1m、Bさんはプラスマイナス0m、Cさんはプラス0.1mとなる。このブレの算術平均をとると0mとなる。
しかし、これでは3人の身長がいずれも1.7mでブレがない場合と同じ結果になってしまう。そこで、ブレを二乗したものの算術平均をとり、その平方根をとる。この例では、ブレの二乗の算術平均は0.00666…(-0.1と0と0.1をそれぞれ二乗して、足し算をして、その合計を3で割ったもの)。そして、その平方根をとって、約0.082mとなる。これは、「二乗平均平方根」と呼ばれる。統計学などで、よく目にするものだ。
最後に、ある会社の職員の平均年収を考えてみる。実は、平均年収というときの平均には、いろいろな前提が置かれているので注意が必要だ。