たとえば、組合平均。労働組合に加入している職員の平均年収だ。組合に加入していない役員や管理職は、対象外となる。そのため、組合平均の平均年収は、実態よりも小さな金額になる。
また、平均をとる対象は正社員だけなのか、それとも派遣社員・パートスタッフ・アルバイト職員も含むのかによっても、平均年収は大きく違ってくる。派遣社員等の職員占率が高い会社で、平均年収をみるときには、対象職種に目をこらす必要がある。
さらに、中小企業の場合、1人、2人の高給役員のために、平均年収の金額が歪むという問題も出てくる。中小企業の、ある会社を考えてみよう。
この会社は、典型的な社長のワンマン会社で、社長の年収は1億円と突出して高い。一方、50人いる従業員の年収は、一般的な給与所得者の水準だ。役職や勤務年数などによって異なるが、10人の管理職は平均700万円、40人の非管理職は平均500万円となっている(この平均は、算術平均)。
このとき、社長も含めた51人の算術平均をとると、平均年収は約725万円となる。社長の年収が、平均年収を引き上げている。しかし、ほとんどの職員の年収は、725万円未満である。この会社の職員の年収を表す数値としては、あまり意味がないかもしれない。
そこで代わりに、51人を年収が高いほうから順に並べたときに、ちょうど真ん中の26番目となる職員の年収をみてみる。このほうが、この会社の平均的な職員の年収として意味があるだろう。この値は、「中央値」と呼ばれる。中央値は、データの平均ではなく、平均順位のデータの値を表す。
以上のように、ひとくちに平均をとるといっても、いろいろな種類がある。なにかのデータを収集して平均をとる場合、どの平均を使うべきか、よく考える必要があると思われるが、いかがだろうか。