日本と世界に激震が走った日産自動車の「ゴーン・ショック」。これから日産経営陣はルノーおよびフランス政府との間で優位に交渉を進め、主導権を握って本来あるべき着地点を見いだす必要がある。ゴーン前会長による独裁的なガバナンスに警鐘を鳴らし続けた大前研一氏が、交渉に向けた“秘策”を披瀝する。
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ルノー・日産自動車・三菱自動車の3社連合は、11月下旬に各社のトップによる会談を開き、「ゴーン氏に過度に権限が集中した指導体制を改め、今後はトップによる合議で3社連合を運営していくことを確認した」と報じられた。しかし、事はそう簡単に運ばないだろう。なぜなら、現在の日産とルノーのアライアンス(出資比率や提携内容)は、ルノーが絶対的に優位だからである(※2018年12月11日時点)。
3社連合の構図をおさらいすると、まず、ルノーは日産株の43.4%(※2018年9月30日時点の有価証券四半期報告書では43.7%)を保有しており、圧倒的な主導権を握っている。取締役会に役員を送り込み、帳簿閲覧権も株主総会での特別決議に対する拒否権も持っている。
一方、これまで指摘してきたように、日産はルノー株を15%しか持っていないので、もし日産とルノーが経営統合したら、日産と日産が34%の株を保有している三菱はルノーの完全子会社になってしまう。しかも、フランス政府が保有しているルノー株15%は、株式を2年以上保有する株主に2倍の議決権を与える「フロランジュ法」によって30%に達し、経営の重要な意思決定に介入できる。かたや日産のルノー保有株には議決権がない。つまり事実上、日産と三菱がフランス政府の影響下に置かれてしまうわけだ。