しかし、この日仏間の“不平等”関係を是正する方法はある。まず、日産がルノーに対する出資比率を25%に上げると、日本の会社法でルノーの議決権は消滅する。あるいは、日産が増資して、ルノーの出資比率が40%を切るようになれば、ルノーに対する日産の議決権が回復し、ルノーの影響力は低下する。つまり、今後のカギは日産がルノー株を25%まで買い増せるかどうか、もしくは増資できるかどうか、ということだ。
ルノー株の買い増しや増資の決議は、日産の取締役会で過半数の取締役が賛成すれば可能である。現在の取締役会は、東京拘置所に勾留されているゴーン氏と側近のグレッグ・ケリー前代表取締役を含めて9人。うち5人が西川廣人社長ら日本人だ。
そのため、ゴーン氏とケリー氏が勾留されている間に取締役会を開いて、日産側が多数派を維持して決議するというのも一つの手だが、2人がいない取締役会でルノー株の買い増しや増資を賛成多数で決議したとしても、それは無効だという訴えを彼らが起こせば、認められる可能性がある。また、取締役会を開く前に2人が保釈されれば、当然、投票に参加するはずだ。
日産は、臨時株主総会を開いてゴーン氏とケリー氏の取締役解任を検討しているとも報じられたが、これはルノーが同意しない限り難しい。なぜなら、取締役を解任するためには株主総会で自動的に50%以上の賛成を得なければならないからだ。
ルノー側がゴーン氏とケリー氏の解任に同意しない場合、臨時株主総会は日産とルノーの「委任状争奪戦(プロキシーファイト)」になると予想されるが、私の経験では、日産のような巨大企業で80%以上の株主から委任状を集めることは不可能だ。仮に80%集まったとしても、ルノーは43.4%の株を保有しているから、自動的に50%以上の議決権を持つことになる。つまり、ルノー以外の全株主がゴーン氏とケリー氏の解任に賛成したとしても、解任案は否決されてしまうのだ。
◆ルノーでの不正疑惑を追及