オウムと似たような閉鎖的共同体が、十九世紀のアメリカに多数あったことを知ったのは『ユートピアと性』(原著は平成二年刊行)である。資本主義の矛盾を敏感に感じ取り、そこから逃避する形で「ユートピア」がつくられた。
とりわけ異彩を放つ「オナイダ・コミュニティ」は、強烈な指導者による独自の教義をもち、親子の愛や、特定男女間の恋愛を厳しく糾弾した。信者たちは信仰と寝食と労働をともにする一方、教義に沿って互いを非難し合い、教祖に追随する幹部が暴走していった。そして、この本の白眉は、教祖の変質と共同体が崩壊する過程である。これもオウムと重なる。
私が出会ったオウム女性信者も今は五、六十代を迎えているだろう。彼女たちがその後をどう生きたのか、尋ねてみたい。
※週刊ポスト2019年1月1・4日号