ライフ

オウム真理教と似た閉鎖的共同体が19世紀アメリカにあった

ノンフィクションライターの与那原恵氏

 平成という時代の前半で猛威を振るったもののひとつに、オウム真理教による地下鉄サリン事件などの教祖を中心とした集団の暴走がある。ノンフィクションライターの与那原恵氏が選んだ、忘れてはならない「平成」の記憶を振り返るにふさわしい一冊は、オウム真理教の成立と崩壊と重なる、19世紀アメリカで発生し崩壊したコミュニティについて記した書だ。

●『ユートピアと性』/倉塚平著/中公文庫/1000円+税

 私が勤め人を辞め、ライターになって一週間後、世は平成になった。それ以前に編集者の養成講座に通っていて、その講師の一人が『別冊宝島』(宝島社)の石井慎二編集長だった。彼にノンフィクションを書くように勧められ、それ以来、同誌にルポを寄稿するようになった。

 オウム真理教への取材は、平成七年三月の地下鉄サリン事件の三ヶ月後から、数回に及んだ。オウム広報は宝島社の取材に協力的で、総本部や道場内部にも入れたし、広報が紹介する信者という制約はあったものの、多数の信者に自由に話を聞くことができた。

 私が取材したのは主に女性信者だ。当時の出家信者(一二七四人)の三分の一が女性で、そのうち八割が二、三十代だった。その入信動機で目立つのが、家族との不和、職場での人間関係の葛藤、そして自らの性や身体の悩みである。彼女たちはオウムがその解答をくれ、苦しみから解放されたと語ったが、教団のサリン事件関与を一切認めなかったのは、幹部と一般信者が分断された組織構造において、教団全体を見渡すことさえできなかったからだろう。

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン