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鉄道無料化は実現可能なのか 東急池上線と函館市電の試み

メルボルンのフリーゾーンを周回するトラム。右手に見えるのは、ターミナルのフリンダーズ・ストリート駅


 函館市電は12月31日の終電後から1月1日の始発前まで、初詣客に利便を図る目的で、無料電車を運行している。函館市企業局交通部事業課の担当者は、こう説明する。

「函館市電は2007年から初詣無料電車を運行してきました。これは沿線に神社が多いことから始められた取り組みです。今回は、12月31日の22時台から翌1月1日の1時台まで無料電車を運行します。初詣電車にはスポンサーがついているので、運行経費はそこから賄われています」

 初詣無料電車と銘打っているが、もちろん、利用できるのは初詣客だけではない。誰もが無料で乗車することが可能だ。

 函館市電の無料電車は、大晦日から元日かけて時間を限定した実施にとどまる。毎日運行されているわけではない。とはいえ、長年にわたって無料で継続できているのは函館市電が少しでも多くの人に利用してもらいたいという思いがあるからだろう。その取り組みと情熱は、函館市民にも広く浸透している。

 こうした事例からは、将来的に鉄道運賃は無料化できるのではないか?という可能性も見えてくる。

 鉄道運賃を無料化する動きは、海外にもある。

 オーストラリア・メルボルンは、トラムが市内を縦横無尽に走る。その総延長は250キロメートルに及び、メルボルンは世界でも有数の路面電車都市でもある。

 長大な路面電車網のうち、シティと呼ばれる範囲内は運賃が無料。それは市民のみならず、よそから来た観光客でも同じだ。

 海外からの観光客は、慣れない英語とシステムに戸惑うかもしれない。しかし、非英語圏の観光客でも電停にはフリーゾーンの終点を知らせる表示があちこちにあり、車内放送でも「フリーゾーンは、ここまで」とアナウンスされる。さらに、35番はフリーゾーン内を周回するだけの路線で、35番の沿線には観光地も点在している。だから、非英語圏の観光客でも安心して乗車できる。

 メルボルンのトラムはスポンサーが運行経費を負担しているのではなく、行政当局が市民サービスとして実施している。いわば、税金によって運行経費が賄われている。

 メルボルン当局は公共交通の重要性を強く認識し、それが市民の利益に資すると判断しているのだ。

 日本は高齢化社会を迎え、自動車の運転ができなくなった高齢者の移動手段をどう確保するか? といった問題に直面している。

 その一方、都心部は慢性的に道路が渋滞しており、渋滞緩和のために自動車から公共交通への利用転換が盛んに推奨されている。鉄道の運賃無料化は、公共交通の利用促進を考えるうえで、試す価値はあるだろう。

 これまで鉄道は運賃を払って利用するというのが、当たり前だった。しかし、そうした既成概念は崩れて、そのうち鉄道運賃は無料という時代がくるかもしれない。

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