発達障害の「傾向」のある人の生きづらさを追った新刊


◆自分が何者かわからない、という苦しみ

──ここで改めて発達障害を説明しますと、生まれつきの脳の特性で、できることとできないことの能力に差が生じ、日常生活や仕事に困難をきたす障害です。大きく3つの種類がありますが【※】、障害の程度や出方は人それぞれだと、著書の中で書かれています。そこが、当事者にとっても、サポートする側にとっても、難しい点だと思いました。

姫野:一人ひとり違う特性を持っているので、サポート体制についても、一律にこうするのがよい、とは言えません。ADHDでも、ぼーっとしていて不注意の多い人もいれば、早口で喋りまくるような多動・衝動性の強い人もいます。一見すれば真逆の特性を持っているので、ADHDの人にはこういう仕事が向いている、とは言えないんです。

 それだけに、まず、本人の自己理解が大切になってきます。自分は何が得意で、何が苦手なのか。自分自身が認識することで、周囲に助けを求めたり、対策が立てられるようになります。

【※発達障害には大きく3種類ある。ADHD:不注意が多かったり、多動・衝動性が強い。
ASD:コミュニケーション方法が独特だったり、特定分野へのこだわりが強い。LD:知的発達に遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算が困難】

──となると、新刊の中で姫野さんが取材された、傾向はあるけれど診断はされていない人(=グレーゾーン)は、非常に難しい状況にあると考えられます。

姫野:はい。グレーゾーンの方の中には、自分が何者かわからないから、人にも説明できないという困難を抱えている人がいます。診断が下されていないことで、できないことが多いことを、障害のせいではなく、自分の努力が足りないからと考えてしまいがちです。

 一方で、グレーゾーンの方の悩みも多様です。診断がほしいのにもらえず、病院を何件もわたり歩いたという方もいました。診断は病院に依るところが大きく、グレーゾーンの方にとって負担になる場合があるのです。反対に、診断はいらない、グレーゾーンのままでいいと考えている人もいますし、「二次障害」に苦しんでいる方もいます。

──二次障害とは、発達障害の特性ゆえの人間関係や仕事におけるストレスで、うつ病や睡眠障害などが起きること。こちらのほうが深刻な場合があると、本にも書かれています。

姫野:グレーゾーンの方って、頑張れば、健常者のように振る舞うことができる人が少なくないんです。そのぶん、頑張りすぎて疲れ、二次障害を起こすケースがあるんですね。発達障害の診断を受けるどうかについては、人それぞれ考え方がありますから、必ずしも医療機関を受診すべきだと私は思わないのですが、二次障害のある方は、すぐに病院に行ってほしいと思っています。

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