──上のレベルに進んだ選手で印象に残っている成功事例は?
西谷監督:オリックス・バファローズで活躍する澤田圭佑がその一例です。在学時から、澤田は、「とにかくプロに行きたい」という強い希望がありました。でも、藤浪晋太郎(阪神タイガース)がエースとしていたために、2番手で投げていました。高校では少し力足らずでしたが、将来的にプロに行きたいのならば、大学ではトップのリーグで揉まれることを薦めました。
そこで、1年生から投げていける大学に行った方が良いと判断しました。本人が、「東京の大学に進学したい」という希望があり、東京六大学を見た時に、立教大学の投手陣が少し手薄という印象を受けました。様々な関係者にも話を聞き、「立教なら1年生から登板できるチャンスがある」という助言を頂きました。当時、立教大学の監督をしていた、大塚淳人さん(2010年~2013年まで在任)に連絡させて頂き、アスリート選抜試験で入学しました。
──結果的に、澤田投手は神宮で活躍して、プロ野球という目標を叶えましたね。
西谷監督:澤田なら体もできており、大学でも1年生から技術面でも精神面でもフルで戦えると思いました。良い投手がたくさんいる他の大学ならば、3年生ぐらいからの登板になってしまうと思いました。また、もし背番号1を付けて活躍していたら、澤田には他の大学を薦めたかもしれません。
──社会人野球に目を移すと、大阪桐蔭から立教大学に進学し、三菱重工神戸・高砂で活躍している那賀裕司選手がベストナインを取りました。
西谷監督:那賀は大阪桐蔭から立教大学に進んだ第1号で、彼のおかげで、立教大学ともお付き合いが出来るようになりました。その後、先ほどの澤田、侍ジャパン大学代表の田中誠也が活躍することで、大阪桐蔭からまた獲得しようと思ってもらえます。
──大阪桐蔭に進学を考える上で、中学生の保護者は、大学進学についても敏感ですか?
西谷監督:昔から敏感なご両親はいます。大阪桐蔭に進学し、甲子園で優勝して、大学野球で活躍して、プロ野球に行きたいと思う子供たちが集まってきてくれていると思います。リクルーティングの時、ご両親から質問されたら答えますがが、進学は入試ですし、絶対など言い切れませんので、私の方から(大学など)進路の話は一切しません。それぞれが活躍できる舞台に進めさせて上げたいと思っていますが、活躍できる舞台の適性を見極めるは本当に難しいです。
──大学の推薦を受けることが出来る「評定3.0以上」という最低レベルをクリアする必要がありますよね?
西谷監督:評定に関しては日頃から言っています。評定がなければ、進学できないこともあるので、勉強もしっかりさせます。野球の才能がありながら、評定が0.1足りなければ、どれだけ私がお願いしても受験資格がないので、合格することはできません。あとは推薦に必要な評定を決める学年が3年生の1学期なのか、2年生までなのか、大学によっても評定の基準が違うので、そのあたりの研究も必要です。
──入学してからの勉強の習慣づけも重要ですね?
西谷監督:寮生活を送っているので、テスト前やテスト期間は勉強会を開催します。それでも勉強が苦手な子供がいるのは確かです。時々、1年時の悪い評定が響いて、推薦を受けることが出来ない子供もいます。だから、毎年評定は不安の種です。今年の3年生、21名全員の進路が決定したので、ホッとしました。次は、今の2年生の進路を叶えてあげられるようにしたいので、情報収集中です。
──寮生活で、ルールはありますか?
西谷監督:起床や消灯はその日によって変化します。起床時間は学校に合わせて、大体決まっていますが、消灯は練習時間に合わせて変わります。全員一緒に夕食を食べ始めることはなく、3年生が入浴している時に1、2年生が食事をとるようにしています。入浴と食事が終わり次第、一度寮内の清掃を行うので、その時に消灯時間を伝えます。また、洗濯など、自分のことは自分でするように決めています。