AIの活用で医療が変わる
「AI(人工知能)医療診断」は驚異の進化を続けているが、医療におけるAIの活用は、「個人の病気を見つける、治す、予防する」といったところにとどまらない。
つくばウエルネスリサーチは、自治体が実施する住民の健康対策の立案を支援するAIを開発している。
「AIに住民の健康診断や診療報酬明細書の情報を与えると、地域ごとの健康問題とその原因を特定し、保健指導の施策を提案してくれます」(同社執行役員・塚尾晶子氏)
同社では2020年9月までの実用化を目指し、新潟県見附市と茨城県常総市と共同で開発を進めている。同社に蓄積されている全国の自治体75万人分の過去5年の健康関連データや、自治体の健康対策のコンサルタントをしてきた筑波大教授・久野譜也氏らの研究ノウハウをAIに学習させているという。
そこから、地域ごとに「塩辛いものを控えるべき」といった提案を導き出す。
「実は同じ自治体でも地域によって一人あたりの平均医療費が年間10万円違うこともある。生活スタイルや地元医師の考え方の違いが原因だったりする。しかし、自治体には統計分析に強い職員が少なく、いろんなデータがあるのに活用できていない状態でした。AIでデータを有効活用できるようになれば地域による健康格差が減ることも期待できます。さらに、地理情報などをAIに入れることで、『緑が多い、車の利用率が低い』などの地域の特色がどう健康度に違いをもたらすかがわかり、全国の自治体に広がれば“健康な国づくり”にも活かせるようになります」(塚尾氏)
気が付かないうちにAIがあなたを健康にしてくれている──そんな現実が、もうすぐそこまできている。
※週刊ポスト2019年1月1・4日号