かつて、スズキには最低地上高を上げたSUVルックの軽で「kei」があったのだが2009年に生産を終了。keiは1998年に発売され、生産終了まで11年間、フルモデルチェンジを受けることなく継続販売された。地味だったが、それだけ根強いファンに支えられていたのだろう。そして、鈴木修氏が生産終了を惜しむ声を直接聞き、開発陣に新しいクロスオーバーSUVの開発を命じたのだ。
ハスラーの登場時はすでに現在のSUVブームが到来しており、デザイン的には「BMWミニ」を彷彿とさせながら、最低地上高を上げたハスラーのSUVルックは大いに受け、CMキャッチコピーの“遊べる軽”もかなり浸透していった。
特に、クルマのルーフとボディのカラーを分けたツートーンカラータイプはオシャレ感がうまく演出され、目を引いた。筆者も自宅から最寄り駅までの道でツートーンカラーのハスラーを何度も見かけ、思わず振り返った記憶がある。
ともあれ、2014年初頭に発売されたハスラーが大人気となったからこそ、デザイン的に“兄ハスラー”ともいうべき、小型車の「クロスビー」が1年前の2017年に登場(12月25日発表、発売)したともいえる。
前述したジムニーは例外として、スズキのクルマはおおよそ5年、ないし6年でフルモデルチェンジされるケースが多い。ハスラーは2018年に入ってからも「タフワイルド」や「ワンダラー」といった特別仕様車を出してきているが、これまでのモデルチェンジサイクルに照らすと、2019年はアルト、そしてハスラーの新型が登場する可能性が高い。
同業他社の中には日本市場は放置状態で、フルモデルチェンジを受けないままのクルマも少なくないし、ようやく日本市場にも投入と思ったら、海外ですでに先行販売していたクルマを日本向けにチューニングし、おまけで投入した印象のクルマもある。
日本で、特に若年層のクルマ離れが加速している理由として、真っ先に挙げられるのが税金、保険、高速道路代、駐車場代などのランニングコストが高い点だ。自動車メーカーも活路を海外に求めるから勢い、クルマの価格がどんどん上がり、車両もどんどん肥大化してきた。
日本の、特に生活道路にはまったくマッチしていないサイズのクルマが多くなった中で、米国や中国市場からすでに撤退し、大きなクルマを作る必要性が少ないスズキは、いまや最も日本市場に寄り添った自動車メーカーかもしれない。