会社側の狙いは「通信やeコマース、インターネットサービス分野は事業としてほとんど手つかずで、ここを当社としてどうしていくのか、向こう3年で考えていく」(垣内社長)としているだけに、三菱商事本体でデジタル関連ビジネスに関っていく人材、あるいは外に切り出したグループ企業では若手の幹部登用が始まりそうだ。
ただし大組織だけに、三菱商事本体で若手の幹部登用が増えてきたら、“年上の部下”との軋轢や齟齬が生じる可能性もあるし、グループ会社で若くしてトップや役員に抜擢されても、三菱商事本体との“従属感”が拭えないようだとモチベーションは上がらない。
かつて、新浪剛史氏が43歳という若さで、グループ化したローソンの社長に就いて世間を驚かせたが、それよりはるかに若い世代の人材を、それなりの部署やそれなりのグループ企業などで抜擢、登用できるかどうか。
異業種だが、60代前半のある大手ホテルチェーンの社長も、「海外のホテルチェーンのトップに会うと、ほとんどが30代から40代。そういう機会があるたびに、思い切った若返りのためにも早く、経営人材を育てなければと痛感する」と語っていた。
折しも、三菱商事が新人事制度をスタートさせる2019年4月から、働き方改革関連法が施行される。残業の上限設定や同一労働同一賃金などいくつかの項目があるが、ひときわ注目されるのが、「高度プロフェッショナル制度」、略して高プロと言われる制度だ。
年収でおおよそ1000万円以上のプレーヤーが対象とされ、想定職種はアナリストやコンサル、ディーリング、研究開発等とされている。以前、物議を醸したホワイトカラー・エグゼンプションと同義の制度で、労働時間の自由裁量度が増す半面、働かせ放題制度、残業代ゼロ法案など負の側面リスクが、いまなお指摘されている。
30歳過ぎなら年収1000万円を超えるといわれる大手商社マンの世界も、若手の経営人材登用で成果主義の徹底が、より進められていくことになる。一方で今後、勤務先の企業に所属したまま制約や縛り、しがらみなどがある環境での成果主義は敬遠し、独立や転職の道を選ぶ人がさらに増えるかもしれない。
一般論として、働き方改革は企業側の“働かせ方改革”と揶揄する声もあるが、4月以降、働き手の選択多様化がどこまで進むかも焦点だ。