公式ホームページの最上段に「『NHKドラマ』×『ゾンビ』 異色のコラボ!」と掲げられているように、『ゾンビが来た』の狙いは、「NHKらしくない番組」の制作。昨年最大のヒットバラエティーとなった『チコちゃんに叱られる!』(NHK)がそうであるように、「中高年層だけでなく、若年層からも評価を得られる番組作り」を進めているのです。
その背景にあるのは、「今年中にもスタートする」と言われているテレビ番組のネット同時配信。『ゾンビが来た』の公式ホームページに、「新しい価値観を持つミレニアル世代に向けて、完全オリジナルのジャパニーズ・ゾンビドラマ」と書かれていることからも、受信料を気持ちよく払ってもらうための若年層対策である様子がうかがえます。
片や『ザンビ』は、人気絶頂の乃木坂46を中心に据え、舞台やゲームを含む一大プロジェクト。2014年にAKB48の大和田南那さん、川栄李奈さん、高橋朱里さんらが出演した『セーラーゾンビ』(テレビ東京系)が放送されたことからもわかるように、アイドルとゾンビは相性のいいコンテンツなのです。
ファンが「ゾンビに襲われるアイドル」「ゾンビになってしまったアイドル」のスリルを味わえるのはもちろん、ファン以外の人も「ゾンビの登場によって人間の悩みや欲望があらわになり、絆や愛が試される」というヒューマン要素を楽しめるでしょう。
『ゾンビが来た』の主要キャストに、石橋菜津美さん、土村芳さん、瀧内公美さんという新進の若手実力派をそろえたことからも、ゾンビドラマが女優の登竜門となっている様子がうかがえます。
◆ゲームでゾンビに親しんだ若年層を味方に
ゾンビをモチーフにした作品は古くからありましたが、21世紀に入ってから、映画『バイオハザード』や、海外ドラマ『ウォーキング・デッド』がヒットし、近年でも映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『アイアムアヒーロー』などが制作されるなど、すっかり定番コンテンツになりました。
最大の強みは、長年ゾンビ作品を楽しんできた層に、ゲームの中でゾンビに親しんできた若年層を加えたターゲットの幅広さ。さらに、『カメ止め』という追い風を得た両作がどんな反響を呼ぶのか。ともに視聴者数が限定される深夜ドラマではありますが、制作費300万円で大ヒット映画となった『カメ止め』のように大化けする可能性がないとは言えないでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。