菫さんの棋力は韓国で急速に伸び、プロレベルまで達したのだが、そんな話を聞くと、「学校はどうしたのか」と疑問に思うだろう。

 囲碁棋士の中には、東京大学や京都大学、慶応、早稲田などの名門大学卒業の棋士もいるが、多くの棋士はもちろん、井山裕太五冠をはじめトップ棋士のほとんどの学歴は「中学卒業」だ。

 プロの手合いは、平日に組まれる。多くのトップ棋士は中学生のうちにプロ入りするので、学校はしょっちゅう休むことになる。また、プロ入り前の修業中でも、師匠宅などでの研究会があれば、学校を休んで向かうのはむしろ当たり前のことだ。

 元名人の依田紀基九段は修業時代、師匠宅で内弟子生活を送った。学校には行ったが、授業はまったく聞かず、ずっと詰碁など碁の勉強をして過ごした。

 趙治勲名誉名人の内弟子だった門下生は、「この子たちは、碁のプロになるために全国から集まってきているから」と、師匠が学校側と交渉。午前中だけ通学し、毎日午後は早退して碁の修業をしたという。

 元棋聖・名人・本因坊の山下敬吾九段は、小学生のうちに公文式の国語、数学、英語の3教科を高校卒業レベルまで終わらせ、あとの時間は囲碁に集中させた。

 音楽やスポーツの世界でも同様のことがいえるが、スタートは早ければ早いほどよく、10代までは棋士人生において基礎ができ、大きく飛躍する土台を作る大切な時期。そのときどれだけ真剣に碁に向かったかということは、将来に大きく影響する。学校に行く時間も惜しんで修業にあてなければ、一流にはなれない。義務教育優先主義は、秀でた才能の持ち主にとって雑音にしか感じられないのかも知れない。

 日本の希望の星でもある菫さん。大きく羽ばたけるよう期待し、皆で見守っていきたい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト